お金というものは、
入ってくる時はゆっくりなのに、
出ていく時だけ、なぜか足が速い。
給料日までは、
あれだけ長く感じるのに、
支払いの日はすぐに来る。
少し余裕ができたかなと思ったら、
電気代、水道代、通信費、食費、日用品。
気づけば、
財布の中も、口座の数字も、
静かに小さくなっている。
お金は、
出ていく時にだけ、
まるで用事を思い出した人みたいに急ぐ。
「ちょっと待って」と言いたくなる。
でも、待ってくれない。
生活しているだけで、
お金は少しずつ出ていく。
ぜいたくをしたつもりがなくても、
特別なことをしたつもりがなくても、
ただ普通に暮らしているだけで、
ちゃんと減っていく。
それが少し、
切ない。
お金のことばかり考えたくないのに、
お金のことを考えずには暮らせない。
欲しいものを買う時よりも、
必要なものを払う時の方が多い。
楽しみのために使うお金より、
暮らしを続けるために消えていくお金の方が、
ずっと現実的な顔をしている。
だからこそ、
お金が出ていく瞬間には、
少しだけ寂しさがある。
また働かないといけない。
また考えないといけない。
また我慢しないといけない。
そんな気持ちが、
支払いの数字の向こう側に見える。
けれど、
お金が出ていくということは、
何かを支えているということでもある。
家の明かり。
あたたかいごはん。
スマホがつながること。
雨の日に帰る場所があること。
そう思うと、
全部がただ消えているわけではないのかもしれない。
足が速いお金は、
どこかへ逃げているのではなく、
暮らしの形に変わっているのかもしれない。
それでも、
もう少しゆっくり歩いてくれてもいいのにと思う。
入ってくる時は、
あんなに慎重なのだから。
出ていく時くらい、
少しだけ振り返ってくれてもいい。
お金は今日も、
こちらの気持ちを置いて、
軽やかに出ていく。
そして残されたこちらは、
小さくため息をつきながら、
また明日の暮らしを考える。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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