2026年4月1日水曜日

招き猫の話

招き猫

ふとしたとき、店先にちょこんと座っている招き猫に目がいく。

あの小さな手の動きは、とてもゆっくりで、
どこか時間の流れまで穏やかにしてくれるようだ。

右手をあげている猫はお金を招き、
左手をあげている猫は人を招くと言われている。

そんな話を聞いたことがある。

けれど、じっと見ていると、
そのどちらも、ただ「来てほしい」と願っているだけのようにも思えてくる。

忙しさに追われていると、
お金はどこか遠くて、冷たいもののように感じることがある。

数字の増減に一喜一憂して、
本当は何のために必要だったのか、わからなくなる瞬間もある。

そんなとき、招き猫のゆっくりとした動きを思い出す。
急かすこともなく、焦ることもなく、
ただ静かに「大丈夫」と言っているような気がする。

お金はきっと、追いかけるものというよりも、
静かに整えた場所に、自然と訪れるものなのかもしれない。

部屋を少し片付けてみたり、
机の上を整えてみたり、
そんな小さなことの積み重ねが、
見えない流れをゆるやかに変えていく。

招き猫は何も語らないけれど、
その姿はどこか、暮らしのあり方をそっと教えてくれているようだ。

無理に手を伸ばさなくてもいい。
ただ、自分の場所を整えて、静かに待つ。

その時間の中で、必要なものは、きっと少しずつやってくる。

今日もどこかで、あの小さな手が、
変わらずゆっくりと動いている。

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